ヒュミラ休薬

今回は、前回に引き続きヒュミラの話題です。

前回は、HOPEFUL-1という早期関節リウマチ患者さんに、メトトレキサート(リウマトレックス、メトレート、以下MTX)+ヒュミラを同時に開始するという試験内容をご紹介しました。前回の記事はこちらをご覧下さい。

今回は、その後ヒュミラを休薬したらどうなるか、というHOPEFUL-2試験の結果をご説明します。お急ぎの方は「まとめ」のみでもご覧下さい。

 引用元:RMD Open. 2016; 2: e000189

目的

日本人の早期関節リウマチ患者さんで、ヒュミラ休薬1年後の状況を評価する。

対象患者さん

HOPEFUL-1試験の52週間を完了した患者さんが対象です。HOPEFUL-1では最初の26週間はMTX+ヒュミラ群とMTX単独群に分かれていましたが、その後の26週間では、いずれの群もMTX+ヒュミラが投与されていました。

HOPEFUL-1の対象患者さんを振り返ってみると、発症早期で関節破壊進行のリスクの高い患者さんが主な対象となっていました。詳しくは前回記事をご覧下さい。

方法

HOPEFUL-1試験の52週間完了時点で、患者さんに説明し、ヒュミラを継続するか休薬するか同意によって決定しました。そしてその決定に応じて、ヒュミラ継続群・ヒュミラ休薬群の2群に分けて比較しました。

評価項目

DAS28mTSSHAQ-DIなどによって臨床的・構造的・機能的それぞれの側面から効果を評価しました。

結果

220人の患者さんがHOPEFUL-2試験の参加に同意し、114人がヒュミラを休薬(ヒュミラ休薬群)、106人がヒュミラを継続(ヒュミラ継続群)しました。

この2群の間で、HOPEFUL-1開始時、HOPEFUL-2開始時の特徴(年齢、性別、活動性など)は特に差は認めませんでした。

ヒュミラ休薬群のうち、休薬後の観察期間である52週間を完了できたのは92人でした(継続率80.7%)。完了できなかった理由は、ヒュミラ再開を必要としたのが10人(8.8%)、他の生物学的製剤を必要としたのが5人(4.4%)でした。ヒュミラ継続群のうち52週間を完了できたのは65人(61.3%)で、完了できなかった理由は効果不十分が9人(8.5%)、経過良好でヒュミラ不要になったのが9人(8.5%)、経済的理由が7人(6.6%)、有害事象が6人(5.7%)でした。

次に効果についての結果を説明します。

まずDAS28-CRPです。休薬開始時はの平均DAS28-CRPは休薬群で2.1、継続群で2.2と差はありませんでしたが、休薬から52週後の時点では、休薬群で2.5、継続群で2.0と、休薬群で活動性が上昇して差がついてしまっています

DAS28-CRPによる寛解達成率、低疾患活動性達成率についてです。寛解達成率は休薬群で60.4%、継続群で76.1%、低疾患活動性達成率は休薬群で74.0%、継続群で91.3%でした。これはいずれも継続群の方が割合が高かったという結果になっています。

休薬群の中で、休薬52週後に低疾患活動性を維持できたかどうかは、休薬時のDAS28-CRPの値が大きく影響しました。その境目をDAS28-CRP=2.0で設定してみると、感度81%、特異度75%程度となったそうです。大雑把に要約すると、休薬時のDAS28-CRPが2.0未満だと休薬後も低疾患活動性を維持できる可能性が高く、2.0以上だと低疾患活動性を維持できる可能性が低くなる、ということです。

次はレントゲン上の進行についてです。休薬群と継続群とでレントゲン上の進行には有意差はありませんでした。ただし、HOPEFUL-1の段階で、MTX+ヒュミラ群であったのか、MTX単独群であったかという視点では差があり、MTX単独群の方がレントゲン上の進行を認めていました。

有害事象

過去の報告と比較し、特記すべき有害事象は認めませんでした。

まとめ

ヒュミラを休薬した群の方が活動性が上昇してしまうという結果ですが、これはやむを得ないものと思います。大事なのは何割程度の人が活動性が上がってしまうのか、また休薬しても活動性が上がらなさそうな人はどのような人か予測できないか、という点です。

ヒュミラを休薬しても低疾患活動性が維持できた人の割合は74.0%です。これはそれなりに良い結果ではないかと個人的には思います。ただし、注意しないといけないのは、発症早期にMTX+ヒュミラで強力な治療をした場合、という限定付きではありますが。

また、今回の試験の参考になるところは、低疾患活動性を維持できる人と維持できない人との差はどこありそうかを検討している点です。今回示唆されるのは、休薬時のDAS28-CRPが2.0というのが境界線ではないか、という点です。つまり、休薬時にDAS28-CRP<2.0であれば、休薬しても低疾患活動性が維持できる可能性が上がるということです。

これまでの同じような試験では、ここまで言及しているものは少なく、より疾患活動性が下がっている人のほうがおそらく休薬しやすいだろうという推測でしか言えなかったですが、今回はこの点に言及している点が非常に参考になると思います。

ちなみに、DAS28-CRP=2.0というのは、腫脹・圧痛関節が合わせて1ヶ所以内、VASが5mm以内、CRPが0.2mg/dL以下というぐらいが目安です。なかなか厳しい条件ですよね。

ですが、こういった結果を提示してくれることで、患者さんも私たちもより一層目標をもって治療をすすめることができると思います。

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