骨粗鬆症の基本②

今回は骨粗鬆症の治療を中心に説明していきます。

いつ治療を開始するか?

いつ薬による治療を開始するかは、正確に言うと細かい基準がありますが、大雑把には前回説明した骨粗鬆症の診断基準を満たせば治療を開始する、と考えてよいでしょう。

どんな治療をするのか?

基本的には薬による治療がメインになります。骨粗鬆症に対する薬をタイプ別に主なものだけあげると以下のようになります。

①骨形成を促進する薬剤:骨を作るタイプ
・テリパラチド(フォルテオ、テリボン)

②骨吸収を抑制する薬剤:骨が壊されるのを抑えるタイプ
・ビスフォスフォネート製剤(ボナロン、ベネット、ボンビバなど)
・デノスマブ(プラリア)
・女性ホルモン薬(エビスタ、ビビアントなど)

③骨形成・骨吸収両者の働きをもつ薬剤
・ロモソズマブ(イベニティ)

④骨を作る材料
・カルシウム
・ビタミンD(エディロール、アルファロールなど)

これらのうちどの薬剤を使うのか、どの順番で使うのか、に関しては患者さん毎に異なります。その患者さんの骨粗鬆症の成因や、骨密度が下がっている部位、合併する基礎疾患などに応じて考えます。

例えば、腰椎の圧迫骨折を起こしてしまったような患者さんでは、腰椎の骨密度が落ちていますので、まずはテリパラチドを使うことが多いです(テリパラチドは腰椎の骨密度を上げる効果が高いです)。ただ、この薬は使用期間は2年間と決まっています。この2年間でしっかり骨を作っておいて、その後はデノスマブやビスフォスフォネート製剤で保っていく、といった戦略をとったりします。一方で、テリパラチドは大腿骨の方に関しては効果が劣ってしまいますので、大腿骨の骨密度も大きく低下しているような方の場合は注意が必要です。

以前紹介しましたが、デノスマブ→テリパラチドの順に薬剤を使うとテリパラチドの効果が十分に発揮されないのでこれも注意が必要です(参考:フォルテオとプラリアどちらを先に使う?)。

また、ステロイドを内服中の方については考え方が少し異なります。それについては追々説明します。

薬以外の治療:食事療法・運動療法

④にあげたカルシウムとビタミンDは骨を作る際の材料になるものです。①〜③の薬の多くはカルシウム、ビタミンDをしっかり摂っている前提で効果が保証されたものですので、普段の食事でこれらの栄養素をしっかりとっておくことも重要です。ビタミンKも大切と言われています。

 カルシウムを多く含む食品:牛乳・乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆・大豆製品
 ビタミンDを多く含む食品:魚類、きのこ類
 ビタミンKを多く含む食品:納豆、緑色野菜

 カルシウムの推奨摂取量:700〜800mg
 ビタミンDの推奨摂取量:400〜800IU(10〜20μg)
 ビタミンKの推奨摂取量:250〜300μg

また、運動療法も大切です。ウォーキングや筋力訓練によって骨密度上昇・維持に有効であるとされています。

骨粗鬆症治療の目的

骨粗鬆症の治療をしていると、ついつい骨密度にのみ目がいってしまいがちです。しかし、骨粗鬆症治療の本来の目的は何でしょうか?

それは骨折の予防であり、ADLの低下を予防することです。骨粗鬆症になると骨折が起きやすくなる、骨折が起きれば日常生活の動作がしにくくなる、そうなると行動範囲が狭くなっていく(このことをADLの低下と言います)、といった形で支障をきたします。

骨密度はよい指標ですので、もちろん定期的に測定して上がっていることを確認することも非常に重要ですが、骨折を起こさない、日常生活・行動範囲を狭くしないように予防する、という視点を持っておくことも大切です。

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