ヒュミラ休薬後の長期経過

今回も引き続き生物学的製剤のヒュミラの話題です。

前回、前々回で早期関節リウマチに対するメトトレキサート(リウマトレックス、メトレート、以下MTX)+ヒュミラでの治療開始について検討したHOPEFUL-1試験、そしてその後ヒュミラを休薬したHOPEFUL-2試験についてご紹介しました。

HOPEFUL-2試験ではヒュミラ休薬から1年間観察した結果について報告されていました。今回は、さらに2年間の観察を追加し、ヒュミラ休薬から計3年間観察したHOPEFUL-3試験についてご紹介します。

 引用元:Arthritis Res Ther. 2017; 19: 56

目的

ヒュミラの長期間の休薬の可能性について検討しています。

対象患者さん

HOPEFUL-2試験で1年間の経過観察期間を、ヒュミラ以外の生物学的製剤の投与を受けずに終了した患者さんを対象としました。

HOPEFUL-1試験、HOPEFUL-2試験、HOPEFUL-3試験は、すべて継続した一連の試験ですので、対象患者さんの細かい内容は、それぞれ、HOPEFUL-1試験はこちら、HOPEFUL-2試験はこちらをご覧下さい。

方法

HOPEFUL-2試験の完了時点で、患者さんに説明し、そのまま試験を継続するかどうか、同意によって決定しました。そしてその決定に応じて、ヒュミラ継続群・ヒュミラ休薬群の2群に分けて2年間追加の計3年間経過観察し比較しました。

評価項目

主要評価項目:(HOPEFUL-1試験の開始から)208週時点でのDAS28-CRPの変化、低疾患活動性達成率(DAS28-CRP<3.2)

副次評価項目:寛解(DAS28-CRP<2.6)達成率、HAQ-DIの変化(機能的寛解の評価)、mTSSの変化(構造的寛解の評価=レントゲン上の骨破壊進行がないか)

結果

172人の患者さんが試験に登録され、79人がヒュミラ継続群(MTX+ヒュミラ)、93人がヒュミラ休薬群(MTX単独)となりました。そのうち、ヒュミラ継続群は61人、ヒュミラ休薬群は74人がHOPEFUL-3試験を完了しました。

まずDAS28-CRPの結果についてです。休薬時点でのDAS28-CRPの値はいずれの群も同様でした。その後、休薬群は130週にかけてDAS28-CRPはやや上昇(=活動性が上昇)し、その後はよこばいでした。ヒュミラ継続群では208週まで継続して安定していました(=活動性の上昇はなかった)。

次は低疾患活動性達成率です。ヒュミラ休薬群では、HOPEFUL-3試験の開始時点である104週時点までに低疾患活動性達成率は80%程度まで低下しましたが、その後は低下はありませんでした。208週のHOPEFUL-3試験終了時点で74人中59人(79.7%)、ヒュミラ継続群では61人中58人(95.1%)が低疾患活動性を維持していました。この数値の間には有意な差が認められます。

いずれの群でも低疾患活動性を維持していた患者さんの間で、HOPEFUL-1試験の期間がMTX+ヒュミラであったかMTX単独であったかは変わりはありませんでした。HOPEFUL-1では当初の26週間がMTX+ヒュミラかMTX単独かの2群に分けられ、その後はいずれの群もMTX+ヒュミラの治療に移行していました。想像では当初からMTX+ヒュミラで治療していた方がその後の結果もよさそうに思いますが、少なくとも休薬後も低疾患活動性を維持するかどうかにはそれは影響しなかったということです。

52週時点(休薬時点)の特徴を振り返ってみると、低疾患活動性を維持していた患者さんでは、維持できなかった患者さんに比べて、CRP、血沈、DAS28-ESR、RF(リウマトイド因子)や抗CCP抗体の値が低かった、という結果でした。こういった状況を踏まえてさらに統計解析をすると、208週時点(HOPEFUL-3試験完了時点)での低疾患活動性維持に強く影響を与えた因子は、52週時点(ヒュミラ休薬時点)でのDAS28-CRPとRFでした。

RFについては87.0U/mL(感度94.9%、特異度60.0%)が分かれ目で、87.0U/mL以下であれば低疾患活動性を維持できる可能性は86.2%、87U/mLより大きいと33.3%となります。

DAS28-CRPについては1.40(感度47.5%、特異度20.0%)が分かれ目の値となりました。

副次評価項目の結果については省略します。

有害事象

有害事象については、ヒュミラ休薬群の方が全体の件数は少ないという結果でした。

まとめ

ヒュミラを休薬すると、休薬しない場合に比べて低疾患活動性を維持できる可能性は下がります。しかし208週時点(ヒュミラ休薬から3年)で、ヒュミラ休薬群でも79.7%が低疾患活動性を維持できており(ヒュミラ継続群では95.1%)、この割合は高いものと考えてよいと思います。104週時点(ヒュミラ休薬から1年)でも同様の達成率であり、休薬後1年で低疾患活動性が維持できていれば、休薬3年後もそれが維持できそうです。

また、休薬後も低疾患活動性が維持できるかどうか予想するための判断材料としては、DAS28-CRPが有用で、その値は1.40が境目ではないかということです。RFも参考になるかもしれませんが、ランダム化試験の結果ではないため注意が必要です。

当初からMTX+ヒュミラで治療したか、当初はMTX単独で26週後(半年後)からヒュミラを追加したかどうかは、休薬後の低疾患活動性達成率には影響しませんでしたが、関節破壊の進行には影響しているようです。一方で、ヒュミラを継続した場合には休薬群に比べて有害事象は増えます。

このように、ヒュミラを続けること、休薬すること、いずれにもメリット・デメリットがあります。最終的にどうするかは、やはり個々の患者さんの状況に応じて検討するべき、というように解釈できます。

初期から関節破壊の進行が見られ、適応を満たす患者さんでは当初からMTX+ヒュミラで治療を開始し、1年使用してDAS28-CRP<1.4とかなり活動性が抑えられていれば、ヒュミラ休薬を検討する、といった流れになりそうです。

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