機能的寛解(日常生活の困難度がどれだけ抑えられているか)の評価方法

前回、前々回では臨床的寛解、構造的寛解の話をしました。
今回は3つ目の寛解である機能的寛解の話をします。

機能的寛解とは、日常生活の労作をするのにそれほど困っていない状態のことを指します。

ここで3つの寛解の特徴をまとめておくと、
 臨床的寛解:腫れや痛み、炎症の数値、実感などが治まっている
 構造的寛解:関節破壊の進行が止まっている
 機能的寛解:日常生活の労作にそれほど困っていない

となります。
この3つの寛解が達成された状態を目指して治療することになります。
臨床的寛解の復習はこちら、構造的寛解の復習はこちらから。

では、本題に戻って機能的寛解です。具体的にはどのように評価するかです。
下のようなHAQという質問票を使います(見にくくてすいません)。

出典:Arthritis Rheumatism 2003; 49: 784-788

様々な動作が書かれていますが、それぞれの動作について、それを行うのにどれほど困難かを4段階で印をつけてもらいます。何の困難もなくできる場合は0点、全くできない場合は3点になります。
1〜8のそれぞれの項目の中で最も高い点数を採用して、1〜8での平均点を出します。

これがHAQ(J-HAQ:日本語版のHAQ)の点数になります。
点数が低ければそれほど困っていない、高ければ困っている、ということを示します。
この点数が0.5以下であれば機能的寛解の状態にあると評価します。

患者さんから、「こんな動作しないからよくわからない」「こんなことよりも他にもっと困っていることがある」とよくご意見を頂きます。こういったご意見はもっともなことです。ただ、全員にルーチンで行う検査や問診というのは、(全ての人ではなく)多くの人に当てはまる項目を採用しますので、すべての人、すべての項目を網羅するのは不可能です。

とはいえ、もちろん個々に応じた項目を見落とさないことも大切です。多くの人に当てはまるルーチンの検査・問診を用いながら、個々に応じた項目も追加で検査・問診する、という形で一人ひとりの患者さんのリウマチの状況を把握していくのが重要です。

まとめ

今回、前回、前々回と3回にわたって「寛解」についての話をしました。
特に、寛解状態にあるというのをどのようにして評価するかという点について説明してきました。

関節の腫れや痛み、炎症の数値、実感が落ち着いている臨床的寛解
レントゲンで関節破壊の進行が止まっている構造的寛解
日常生活の労作にそれほど困っていない機能的寛解

この3つを達成するのを目標に関節リウマチの治療を行います。

とはいえ、これを達成するのはそうそう簡単なことではありません。
この機会に一度こういった視点でご自身のリウマチの状況を振り返ってみることをお勧めします。
もしご自身で振り返るのが難しければ、当院でお手伝いさせていただきますのでお気軽にご相談下さい。

次回は今回、前回、前々回のまとめで、この3つの寛解をどのようにして達成するかについてのお話です。

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