12〜17歳に対するコロナワクチン接種

今回は、12〜17歳に対するコロナワクチン接種の有効性と安全性についてご紹介します。

今回取り上げる論文は、モデルナ製のワクチンに関する臨床試験です。モデルナ製ワクチンはもともと18歳以上が適応でしたが、この臨床試験の結果をもとに12歳以上に適応が引き下げられました。

そのデータとはどのような内容かご紹介します。

臨床試験の方法

12〜17歳の対象者に対して、モデルナ製ワクチン(以下、単にワクチンと表記します)を接種する群(ワクチン群)と接種しない群(プラセボ群)とに分けて、ワクチン群は4週間をあけて2回接種しました。また、ワクチン群とプラセボ群の人数は2:1に分けられています。

結果

参加者は3732人で、ワクチン群は2489人、プラセボ群は1243人でした。

安全性に関して、最も多かった副反応は接種部位の局所反応でした。接種部位の疼痛はワクチン群で1回目接種後は93.1%、2回目接種後は92.4%でした(いずれのときも重篤なものは5%程度でした)。プラセボ群ではそれぞれ34.8%と30.3%ですので、この副反応はワクチンによる影響ですね。

全身の副反応は1回目接種後は68.5%、2回目接種後は86.1%でした。重篤なものはそれぞれ4.4%、13.7%です。主なものとして、倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪寒です。

頭痛は1回目接種後に44.6%、2回目接種後に70.2%。倦怠感は1回目接種後に47.9%、2回目接種後に67.8%。発熱に関しては、40℃以上・24時間以内が1.9%、40℃以上・24時間以上が0.1%以下でした。

局所反応や全身反応などの持続時間は平均4日間でした。

ワクチン接種が原因と考えられるアナフィラキシーの発生はありませんでした。

効果について見てみます。ワクチン2回接種の14日後以降にCOVID-19感染症を発症した参加者はいませんでした。一方でプラセボ群では4人発症しました。ワクチンの効果は92〜93%程度であろうと見積もられています。ただし、発症者が少なく、正確な評価は難しそうです。

まとめ

上記の結果を読むと、成人に対する効果・安全性とさほど変わりはなく、問題ないと思ってしまいがちです。しかし、あくまで個人的な感想ですが、このデータではよくわからない、というのが私の感想です。

人口比率や倫理的な点からやむを得ないとは思いますが、今回の臨床試験に参加した人数は、成人の場合の臨床試験と比べて1桁少ない人数です。例えばアナフィラキシーについて言えば、成人の場合は数十万回接種して数回発生する程度の副反応です。その頻度のものは今回のような2000〜3000人規模の試験では検出できません。事実今回の臨床試験ではワクチンが原因となったアナフィラキシーは発生しませんでしたが、これはこの年齢層では発症しないと解釈するのは間違いで、検出できるほどの規模の臨床試験ではなかった、というのが正しい解釈です。

また、効果についても、ワクチン・プラセボを2回接種して14日後以降にCOVID-19を発症したのはワクチン群0人、プラセボ群4人と非常に少ない人数でした。発症した人が少ないのは喜ばしいことですが、臨床試験としては、効果を検証するに足るだけのものにはなりません。0人と4人だったら誤差の範囲ですよね、と言われてしまいます。

以上のことから、概ね成人と比べ大きく異なったことは起きなさそうです。ただ、個人的な感想としては、12〜17歳に対する安全性と効果をみるにはもう少しデータがほしい、といった印象です。12〜17歳へのワクチン接種を否定するつもりはなく、これは人口比率や倫理的な点からやむを得ないとは思いますし、正確なところは実際にもっと多くの方に接種したデータが出てこない限りは確定しないと思います。

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