安定期のSLEに対する少量ステロイド

今回は関節リウマチではなく、全身性エリテマトーデス(以下SLE)という病気についての話題です。

SLEは、病勢が強い時期は大量のステロイドを必要とすることもありますが、治療によって安定すればステロイドの量も少量に減ってくることが多いです。ただ、5mg/日(プレドニゾロン換算)程度までステロイドが減った状態で、かつ病勢も安定している状態、というのは逆にステロイドを中止できるのかどうか、といった悩みが生じます(嬉しい悩みではありますが)。

2019年に発表されたヨーロッパリウマチ学会の推奨では、ステロイドは可能であれば中止すると明記されています。しかし、なかなか中止できない患者さんが多いのも事実です。ステロイドがどこまで減量できるのか、または中止できるのかは、各患者さんごとに異なり、毎度悩む事柄です。

今回ご紹介するのは、病勢が安定している時に、少量ステロイドを中止すべきか、継続すべきかを検討した論文です。

 引用元:Ann Rheum Dis. 2020; 79: 339

お急ぎの方は3ページ目まで飛んでまとめをご覧下さい。

目的

再燃防止効果を比較するために、SLEの病勢安定期にプレドニゾロン(ステロイドの具体的な薬の名前、以下PSL)5mgを中止する場合と継続する場合とに分けて検討する。

対象患者さん

・18歳以上の患者さん
・1997年のアメリカリウマチ学会の分類基準を満たす
・SELENA-SLEDAI≦4 *SELENA-SLEDAI:SLEの病勢を表すスコアリング
・BILAGで血液学的異常以外の項目がDまたはE *BILAG:SLEの病勢を表すスコアリング
・患者さんの全般評価=0
・PSL5mg/日投与中
→見慣れないスコアリングの仕方が出てきましたが、簡単に要約すると、PSL5mg/日投与中のSLE患者さんで病勢は落ち着いている、という状態です

方法

ステロイドを中止する群と継続する群の2群に分け(ランダム化)、52週間(1年間)追跡しました。
 中止群:ステロイドを中止
 継続群:ステロイドを継続
*但し、中止群は当初1ヶ月間は副腎不全を予防するためにハイドロコルチゾン20mg/日を投与しています。

評価項目
 主要評価項目:52週時点での再燃率(SELENA-SLEDAIを使用して評価=SFI)
 副次評価項目:再燃までの期間、52週時点での重症で再燃した割合・軽症/中等症で再燃した割合(SFI、BILAG)、血清学的な変化(活動性を表す抗DNA抗体や補体)