帯状疱疹不活化ワクチン

幼少期に水痘・帯状疱疹ウイルスに感染することにより、水痘(=みずぼうそう)を発症することが知られています。発熱の後に水疱が出現する病気です。

水痘は1週間ほどで治癒しますが、治癒した後も体内に潜伏します。その後、加齢やストレス、過労などが原因で免疫力が低下すると、潜伏していたウイルスが再活性化し帯状疱疹を発症します。神経の走行に沿って水疱が出現するので帯状に皮膚症状が出てきて、ピリピリとした痛みを伴う病気です。

関節リウマチや膠原病の患者さんは、免疫抑制剤を使用していることが多く、免疫力は低下しており帯状疱疹のリスクは高いと言えます。

中でも、JAK阻害薬を使用すると日本人の患者さんで帯状疱疹が多く発症するというデータがあります。

以前までは、水痘・帯状疱疹ウイルスに対するワクチンは生ワクチンしかありませんでしたので、既に免疫抑制剤を使用している患者さんには使用することができませんでした。2020年1月より不活化ワクチンであるシングリックスが使用可能となり、免疫抑制剤使用中の患者さんでも帯状疱疹が予防できるようになりました。

今回は、このシングリックスについてご紹介します。

ZOE-50試験

ZOE-50試験は、50歳以上の患者さんを対象に、水痘帯状疱疹に対する不活化ワクチンであるシングリックスを投与した群と、プラセボ(偽薬)を投与した群とでその効果を比較しました。

シングリックスは2ヶ月の間隔をあけて2回接種が必要です。

平均の追跡期間は3.2年で、その間にシングリックスを投与した7698人のうち帯状疱疹を発症したのは6人、プラセボ群で帯状疱疹を発症したのは210人でした。

その効果は97.2%と計算されています。ワクチンの効果としては非常に高いものと言えそうです。

副反応についてみてみます。

投与7日以内の副反応では、注射部位の疼痛がシングリックス群で79.1%・プラセボ群で11.2%、注射部位の発赤がシングリックス群で38.0%・プラセボ群で1.3%、注射部位の腫脹がシングリックス群で26.3%・プラセボ群で1.1%でした。発熱や頭痛、倦怠感、筋肉痛なども20〜50%ぐらいの頻度で出ています。

費用

ワクチンは予防ですから健康保険の適用にはならず、すべて実費です。以前からある生ワクチンは1回のみの投与で約8,000円ですが、シングリックスは1回で約20,000円、2回接種ですので約40,000円ほどかかります。

不活化ワクチンの登場は非常にありがたいことですが、費用の面がまだまだ課題です。

一部の自治体では帯状疱疹ワクチン接種の費用補助をしているようです。当院のある愛知県では、名古屋市で費用の補助をしています。1回の接種あたり自己負担が10,800円になるとのことで、約半分ほどの負担ですむようになっています。愛知県では名古屋市の他に刈谷市でも助成制度を創設するという話を聞いています。愛知県では助成制度を実施中・実施予定であるのはこの2つの自体のみですので、まだまだ補助が十分に受けられるわけではありません。

*愛知県内の助成制度の状況はこちら

費用の点は非常にネックですが、効果は非常に高く、特に50歳以上でJAK阻害薬を使用する場合には接種しておきたいワクチンです。

JAK阻害薬でなくても、生物学的製剤などの使用中にも帯状疱疹はよく経験します。高価ですが可能な方は接種しておくと安心ですね。

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