難病認定(特定医療費助成制度)②

今回は前回の続きで難病認定のお話です。

今回は手続きの実際や、診断書を医師に依頼する際の上手なコミュニケーションのとり方について説明します。

前回記事(難病認定①)はこちらをご覧下さい。

申請の方法

まず申請の場所ですが、多くはお住まいの地域を管轄する保健所です。市町村によっては市町村役場のところもありますので、一度確認してからおでかけ下さい。

必要な書類は、支給認定申請書、診断書(臨床調査個人票)、住民票、世帯の所得を確認できる書類、保険証の写し、同意書など様々あり、ご自身の状況によってさらに必要な書類もあります。手間ではありますが、申請前に一度保健所に行って必要書類などについて説明を聞くとよいかもしれません。

これらの書類を準備して保健所に提出すれば申請できます。申請してから医療受給者証が交付されるまでに3ヶ月程度かかるとされていますが、その間にかかった医療費についても一旦は3割負担で支払う必要がありますが、後から遡って請求できますのでお忘れなく。そのため、医療機関から発行された領収書も必ずとっておいて下さい

診断書(臨床調査個人票)は医師が書くことになります。これを書くためには医師の中でも資格が必要です。新規の申請の場合は難病指定医、更新の場合は難病指定医または協力難病指定医の資格を持っている医師が書くことができます。都道府県などのホームページで難病指定医を調べることができます。大きな病院であれば、自分の主治医の先生が資格を持っていなくても、同じ科の他の先生が資格を持っていれば大丈夫なことが多いです。

どういう場合に難病認定がおりるか

上でも説明したように、難病と診断されたらすべての患者さんが難病認定がおりるわけではありません。①診断されて、かつ②重症度の基準を満たす必要があります。

まずは①診断されたら、という点です。一般的には医師に「〇〇」という病気です、と言われたら診断されたと認識するのが正しいですが、難病の制度のことに限っては、「診断基準(分類基準)を満たす」ことが必要です。難病の診断は難しく、時に「診断基準は満たさないけど〇〇という病気である」と診断することもあるので少し注意が必要です(この場合には認定がおりません)。

②重症度についてですが、これは病気によって重症度の基準は異なりますので、難病センターのホームページでご自身の病気の重症度の基準を調べてみて下さい。トップページで検索できるようになっていますので、そこからご自身の病気のページを見て、診断・治療指針(医療従事者向け)というタブを押してみて下さい。ページの下の方に重症度基準がでてきます。

例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)という病気の重症度を見てみます。こちらをご参照下さい。ページの一番下の重症度の欄を見てみると、SLEで出てくる様々な症状が表になっています。それぞれの症状の左側に数字があります。この半年の間に出ている症状に対応するこの数字を足していって合計が4点以上であれば重症度基準を満たすことになります(本来は重症ではないのに重症基準を満たしてしまう病気もあり、一方で本当に困っている人が軽症と判定されてしまう病気もある、という問題もありますが、今回のテーマではないのでその話はおいておきます)。

難病の更新手続きにあたって主治医にうまく伝えるには

難病は通常は1年毎に更新が必要です。最初は重症度を満たしていても、数年経つと重症度が下がって認定がおりなくなってしまう、ということはよくあります。本当によくなって重症度基準を満たさないというのはいいことですが、本来は重症度を満たすのに誤って認定がおりなくなってしまうことは避けないといけません。

そこで、重症度を満たすような症状・状態が今現在もある、ということを主治医に伝えておくのは必要です。重症度基準を見て頂いたらわかるように、重症度の判断に必要な情報はカルテで検査結果を見ればすぐわかるものから、患者さんにわざわざ尋ねてみないとわからないものまで様々です。

私が難病指定医向けの講習会に行った時に説明されましたが、難病の認定がおりるかどうかの判断基準は、①診断基準を満たしている、②重症度基準を満たしている、この2点の両方が満たされていれば認定がおりるし、一方でも満たしていなければ認定はおりない、とのことでした(軽症高額該当は例外ですが)。私たち医師が書く診断書(臨床調査個人票)には、備考欄があって自由に記載できるのですが、ここにいくら記載しても認定の判断には影響しません。

ですので、診断書を医師に依頼する時にご自身がどういった症状で困っているかということをどれだけ伝えても、重症度基準に関わらない項目であれば意味がなくなってしまいます(純粋に主治医にご自身の現状を知って頂くという点ではもちろん大いに役に立ちますが)。ご自身の病気についてより理解を深める意味もこめて、一度重症度の判断基準を確認してみることをおすすめします。その判断に役立ちそうな症状があるようであれば、ぜひそれは診断書を依頼する時に主治医の先生に伝えて下さい。

関節リウマチは?

このブログをご覧になっている方には関節リウマチの患者さんも多くおられると思います。しかし、関節リウマチは難病には指定されていません。稀な疾患とは言えないからですね。

関節リウマチの方の一部が発症される悪性関節リウマチ(日本以外ではリウマトイド血管炎)という病気は難病に指定されていますので、この病気と診断された方は難病の認定がおりるかもしれません。

ただし、悪性関節リウマチというのは、難治性や治療抵抗性のリウマチのことを指すわけではありません。リウマチによって血管炎を発症した場合が悪性関節リウマチです。血管炎による症状とは手足のしびれや肺病変、皮膚潰瘍などです。関節リウマチの方でこういった症状がある方は悪性関節リウマチに該当するのかどうか一度相談されるとよいかもしれません。

また、関節リウマチの方の中にはシェーグレン症候群を合併することが時々あります。シェーグレン症候群は目や口が乾いて唾液や涙の出方がかなり悪くなってしまう膠原病で、難病に指定されています。ただこういった症状は他人と比較しにくい症状ですので気づきにくいこともあります。シェーグレン症候群で難病が取れるのであればとっておくメリットはあると思います。

難病ということをどうとらえるか

難病であることを患者さんに伝えるのは、私にとって少しだけ嫌な仕事の一つです。難病であることを伝えると、当然ですが多くの方はショックを受けられるからです。

いつも私は次のように説明しています。

「(指定)難病かどうか、というのは自然が決めた基準ではなく人が決めた基準です。難病でもそれほど困らない病気もあれば、難病ではないのに非常に困る病気もあります。難病とは医療費の補助が受けられる病気かどうか、という基準で考えればよいと思います。大変な病気かどうかはまた別の視点で考えましょう」

さて、2回に渡って難病認定の説明をしてきました。少しは役に立つ話があったでしょうか。難病の治療にはお金がかかることも多く、医療費の補助が受けられる制度自体は非常にいい制度だと思います。制度をよく理解してうまく活用しましょう。

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前回記事(難病認定①)をみる
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