ループス腎炎に対するベンリスタの効果
全身性エリテマトーデス(SLE)に対する生物学的製剤でベンリスタ(一般名:ベリムマブ)という薬があります。安定期のステロイド減量や関節痛・倦怠感などに用いられる薬です。
当初の臨床試験では、活動性のループス腎炎(SLEの腎病変)の患者さんは除外されていましたので、ループス腎炎に対するベンリスタの効果というのは未検証でした。
昨年、ループス腎炎に対するベンリスタの効果を検証した臨床試験の結果が発表されたのでご紹介します。
SLEの病態の一部にB細胞が関連しています。B細胞の分化が進むと抗体産生の働きを持つようになります。SLEでは自分に対する抗体(自己抗体)が産生されることで様々な全身臓器の炎症をきたします。ベンリスタはこのB細胞の活性化の刺激を抑える役割をもつ薬剤です。
引用元:N Engl J Med. 2020; 383: 1117
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目的
ループス腎炎に対する標準治療(セルセプト、エンドキサン→イムラン)にベンリスタを上乗せした際の効果と安全性について検証します。
対象患者さん
・18歳以上
・抗核抗体80倍以上またはds-DNA抗体陽性
・1982年のACRの分類基準(1997年改訂)を満たす
・尿蛋白≧1g/gCrまたは腎生検でⅢ or Ⅳ or Ⅴ型ループス腎炎と診断されている
ベンリスタ投与方法
標準治療群:ステロイド(0.5〜1mg/kg)+セルセプト or エンドキサン
ベンリスタ群:標準治療に加え、ベンリスタ10mg/kgを28日毎に100週まで静注投与を追加
*他施設共同ランダム化二重盲検比較試験
*ステロイドパルスの追加可能
*セルセプト:寛解導入期3g/day、維持療法期1〜3g/day
*エンドキサン:500mgを2週毎に6回投与、その後はイムランで維持療法