ANCA関連血管炎に対するステロイドフリー治療に向けて

今回は、ANCA関連血管炎についての話題です。これも膠原病の一つで、肺や腎臓、神経など様々な臓器に炎症を起こす自己免疫性疾患です。

膠原病に対する薬はたくさんありますが、いずれもステロイドを一緒に使った上で効果が実証されている薬ばかりでした。ステロイドは非常に効果の高い薬で膠原病の治療には欠かせない薬である反面、長期的な使用により副作用に問題がある薬です。

今回紹介するのは、ANCA関連血管炎に対するアバコパンという薬で、これはステロイドを必須としない治療で同等の効果が得られたという薬です。ステロイドを使わなくてもよい薬というのは永遠のテーマでしたが、新たな時代への第一歩を予感させる画期的な薬です。

ただし、この薬は2021年3月22日時点で日本では未承認薬ですので、まだ使用はできません

 引用元:N Engl J Med. 2021; 384: 599
 参考:JMIR Res Protoc 2020 9 e16664

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目的

C5a受容体阻害薬であるアバコパンの、ANCA関連血管炎に対する効果と安全性を検証することを目的としています。

対象患者さん

世界の143の施設で行われたランダム化・二重盲検比較試験で、
・顕微鏡的多発血管炎または多発血管炎性肉芽腫症(これらを合わせてANCA関連血管炎といいます)
・MPO-ANCAまたはPR3-ANCAが陽性(ANCA関連血管炎に特徴的な抗体です)
・eGFRが15以上(透析に至るほどの腎機能障害がないということです)
・BVASのうち主要項目1項目以上または副項目3項目以上、血尿・蛋白尿の2項目以上を認める(BVASというのは各臓器の障害をスコアリングしたANCA関連血管炎の重症度スコアです)
を満たす患者さんを対象としました。

初発・再発ともに対象としています。

アバコパンの投与方法

アバコパン群:「アバコパン30mg×2回/日」+「シクロホスファミド or リツキシマブ」
ステロイド群:「プレドニゾン」+「シクロホスファミド or リツキシマブ」

 シクロホスファミド間欠大量静注:15mg/kg(Max:1.2g)を2週・4週・7週・10週・13週に投与
 シクロホスファミド経口:2mg/kg(Max:200mg/日)を14週間投与
 リツキシマブ:375mg/m2BSAを週1回で計4回投与
 *シクロホスファミドの場合は15週以降はアザチオプリン2mg/kgを投与