リンヴォックとオレンシアの比較
今回ご紹介する論文は、JAK阻害薬であるリンヴォック(ウパダシチニブ)とオレンシア(アバタセプト)の関節リウマチに対する効果を比較したものです。SELECT-CHOICE試験というもので、どういう点においてどちらが勝っていて、どういった点に注意が必要か、というところをご説明していきます。
引用元:N Engl J Med. 2020; 383: 1511
ウパダシチニブはJAK阻害薬に分類される内服の抗リウマチ薬です。細胞外からの様々な刺激を伝える酵素であるJAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害して、炎症を起こすような刺激をブロックすることでリウマチを抑える薬剤です。ウパダシチニブは4剤目のJAK阻害薬で、現時点で5剤のJAK阻害薬が発売されています。
目的
リンヴォックの効果と安全性をオレンシアと比較して検証するものです。
対象患者さん
・18歳以上で2010年の関節リウマチ分類基準を満たし、診断から3ヶ月以上経過している
・中等度以上の疾患活動性がある(腫脹関節が66関節中6関節以上 & 圧痛関節68関節中6関節以上 & CRP3mg/dL以上)
・少なくとも1つ以上のDMARDs(抗リウマチ薬)で3ヶ月以上の治療歴がある
リンヴォック・オレンシアの投与方法
リンヴォック群:15mg/日を連日内服
オレンシア群:0・2・4・8・12・16・20週に点滴投与
1回あたり、体重60kg未満の場合は500mg、60kg以上100kg未満の場合は750mg、100kg以上の場合は1000mg
リンヴォック群ではリンヴォックの投与に加えてプラセボ(偽薬:薬の成分の入っていないもの)も点滴投与を受け、反対にオレンシア群ではオレンシアの投与に加えてプラセボの内服も行っています。このようにして、投与を受ける患者さんも投与する医師もどちらの薬が投与されているかわからない状態になっています。こうすることで、試験としては公平なものになり、試験結果に対する信頼性が高まります。自分が投与されている薬がわかってしまうと、この薬だから効くはず(もしくは効かないず)、という心理的な効果も合わさってしまい、薬そのものの純粋な効果が見えなくなってしまいます。