成人Still病に対するアクテムラの効果

今回は成人Still病に対するアクテムラの効果についてご紹介します。

アクテムラはもちろん関節リウマチに対して使うことが多いですが、今では多くの疾患に保険適応を持っています。関節リウマチの他に、巨細胞性動脈炎や高安動脈炎、キャッスルマン病、若年性特発性関節炎、そして今回ご紹介する成人Still病です。

保険適応となる以前は、アクテムラが有効であろうと思いながら、他の様々な免疫抑制剤を使用し抑えきれないときに使うことが多かったですが、保険適応となり早い段階で使用し、しっかり病勢を抑えることができるようになりました。

今回は、保険適応となるきっかけとなった臨床試験をご紹介します。日本からの報告です。

 引用元:Ann Rheum Dis. 2018; 77: 1720

お急ぎの方は3ページ目のまとめをご覧下さい。

目的

成人Still病に対するアクテムラの有効性と安全性を検討することが目的です。

対象患者さん

以下のすべての条件を満たす患者さんを対象としました。
・20歳以上の患者さん
・診断された時の年齢は15歳以上
・山口基準で成人Still病と診断されている
・プレドニゾロン換算で0.5mg/kg/日以上のステロイドを2週間以上使用して効果不十分である
・直近2週間でプレドニゾロン換算10mg/日のステロイドを投与しており投与量の変更がない
・2ヶ所以上の腫脹関節と2ヶ所以上の圧痛関節がある
・1ポイント以上の全身症状がある(発熱、皮疹、リンパ節腫脹、肝脾腫、漿膜炎)
・血沈20mm/h以上またはCRP1.0mg/dL以上

アクテムラ投与方法

アクテムラ群:アクテムラ8mg/kg/回を2週間に1回投与
プラセボ群:プラセボ(偽薬)を2週間に1回投与
 *試験開始当初の4週間はステロイドの投与量は固定し、4週後からの8週間(12週後まで)は条件に従ってステロイドは漸減しました。
 *試験開始12週後から40週後(52週)まではオープンラベルで両群ともにアクテムラを投与して観察しました。
 *他施設共同ランダム化二重盲検コントロール試験(第Ⅲ相)

評価項目

主要評価項目:①4週時点でのACR50達成率、②12週時点でのACR50達成率
副次評価項目:ステロイド投与量の変化、ACR20、ACR50、ACR70、全身症状スコア、発熱・皮疹の有無

結果

27人の患者さんが試験に参加し、14人がプラセボ群、13人がアクテムラ群に振り分けられました。

4週時点でのACR50達成率をみますと、アクテムラ群で61.5%、プラセボ群で30.8%でした。12週時点でのACR50達成率はアクテムラ群で61.5%、プラセボ群で30.8%でした。ACR50は4週時点、12週時点、いずれの時点においても有意差はありませんでした。

全身症状についてはアクテムラ群で優位に改善していました。発熱、皮疹、リンパ節腫脹、肝脾腫、漿膜炎などの全身症状をポイント化してその推移を観察していますが12週時点でアクテムラ群では4.1ポイント改善し、プラセボ群は2.3ポイントの改善でした。

ステロイド投与量の変化も見ていますが、12週時点でアクテムラ群ではステロイド投与量は46.2%減量できており、プラセボ群では21.0%の減量でした。

安全性

有害事象についてはアクテムラ群で多く、最も頻度が高いのは鼻咽頭炎でした。やはり感染症ですね。アクテムラ群ではアクテムラに対するアナフィラキシーや投与時反応も認めており、注意が必要です。

まとめ

主要評価項目については、一見すると有効性に差があるように見えますが、統計学上は差はないという結果になりました。おそらくこれは患者さんの人数が少ないことに起因しているであろうと考えられます。試験に参加する患者さんの人数が多ければ差がついていたのではないかと思いますし、臨床上の実感もそうです。また、これは私見ですが、成人Still病はステロイドに比較的よく反応することが多いので差がつきにくかったこともあるだろうと思います。

一方で全身症状の改善については有意差がつきました。発熱や皮疹などの症状はアクテムラによって改善するという結果でした。

安全性についてはやはり感染症に注意が必要であるというのは、どの病気においても同じですね。

以上のことから、主要評価項目は満たせなかったものの、アクテムラは保険適応となりました。病気の性質上(患者さんが少ない稀な病気、時に命に関わることもありすべての患者さんが試験の対象にできるとは限らないことなど)有意差を出せなかったのは仕方ないと思います。一方で私たちが臨床上使用してきた実感としては非常によく効く薬で、成人Still病の治療を行うにあたって欠かせない薬であると認識しています。

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