妊娠がSLEに与える影響

評価項目

妊娠中または出産後の再燃率について検討しました。

再燃の定義:
 ①前回受診時と比較しPGA*≧1の変化
 ②前回受診時と比較しSELENA-SLEDAI*≧4の変化

*PGA:Physician Global Assessment of disease activityの略です。10cmの物差しを使用して、医師が患者さんのSLEの活動性がどの程度か、該当する箇所に印をつけます。10cmの物差しの左端を0ポイント、右端を3ポイントとし、0ポイントであれば活動性なし、1ポイントは軽度活動性、2ポイントは中等度活動性、3ポイントは重度活動性とされます。このポイントを使用し、今回は「1ポイント以上増加すれば再燃」と定義されました。

*SELENA-SLEDAI:SLEの活動性を表すスコアリングです。様々な臓器症状をポイント化し、存在する臓器症状のポイントを合計したものがSELENA-SLEDAIであり、そのポイントが高ければ高いほどSLEの活動性が高いと判断します。今回は「4点以上増加すれば再燃」と定義されました。

結果

追跡期間中に、計398回の妊娠が確認されました。年齢の中央値は30.6歳、初回妊娠の方の年齢の中央値は29.4歳でした。398回の妊娠のうち、無事に出産を迎えたのは85%の方でした。また、29%は早産でした。

PGAの定義による再燃は妊娠中が妊娠期間外と比較して多く、非妊婦の方と比べると妊婦の方の再燃率は1.69倍程度になりました。妊娠中の再燃の約半数は第3三半期(妊娠28週〜)に起きていました。また、出産後については、1年間の経過で見ると再燃率は変わりませんが、出産後3ヶ月に限ってみると非妊婦の方に比べて上昇しており、妊娠中(特に28週以降)と出産後3ヶ月間は再燃に注意が必要と言えそうです。

SELENA-SLEDAIでみた再燃についても同様の傾向にありました。

妊娠中・出産後3ヶ月間における再燃はヒドロキシクロロキン(商品名:プラケニル)を内服していない妊婦の方に多く起こる傾向にありました。つまり、ヒドロキシクロロキンにより妊娠中・産後の再燃率を低下させることができる可能性が示唆されます。