妊娠中の関節リウマチ活動性低下に寄与する因子

結果

168人の患者さんの190回の妊娠を解析しました。妊娠時の平均年齢は32.2歳でした。

妊娠は概ね40週で出産を迎えることになりますが、この期間を3つに分け、三半期と呼びます。この3つの期間をはじめから順に第1三半期(〜13週6日)、第2三半期(14週〜27週6日)、第3三半期(28週〜)と呼びます。

第3三半期にDAS28-CRP-3<3.2(寛解〜低疾患活動性)を維持できていた人とDAS28-CRP-3*≧3.2(高疾患活動性〜中疾患活動性)となっていた人に分けて解析されました。そうすると、第1三半期に中〜高疾患活動性(DAS28-CRP-3≧3.2)であること、自己抗体(リウマトイド因子や高CCP抗体)が陽性であること、第1三半期にステロイドを使用していること、が第3三半期に低疾患活動性以下になりにくい因子であるということが分かりました。

*DAS28-CRP-3:本来DAS28は圧痛関節数、腫脹関節数、患者さんの全般評価、CRP(or 血沈)の4項目を使用して評価しますが、血沈や患者さんの全般評価は妊娠自体の影響を大きく受ける(関節リウマチ以外の影響が入る)ため、これらにより算出したDAS28は必ずしも関節リウマチの活動性と相関しなくなってしまいます。圧痛関節数、腫脹関節数、CRPのみを用いたDAS28-CRP-3が妊娠中の活動性を最もよく反映するとされているため、妊娠中の関節リウマチの活動性評価はDAS28-CRP-3を用いることとされています。

さらに、第3三半期に寛解を維持できるかどうかを検討してみると、第1三半期に中〜高疾患活動性であること、自己抗体が陽性であることが、第3三半期に寛解になりにくい因子である事がわかりました。第1三半期でのステロイドの使用は統計的な有意差はないものの、使用していることで寛解になりにくい傾向は見られたということです。

さらに解析してみると、第1三半期に低疾患活動性以下であった人は、ステロイドの使用も自己抗体陽性も第3三半期の活動性悪化には寄与しなかったという結果でした。

また、第1三半期に中疾患活動性以上であった場合、①ステロイドの使用によって第3三半期に低疾患活動性以下になりにくく、②自己抗体陽性によって第3三半期に寛解になりにくいということも出てきました。

第1三半期に低疾患活動性以下であった77人の患者さんのうち、74%は第3三半期でも低疾患活動性以下を維持していました。第1三半期に中疾患活動性以上であった患者さんの場合には、第3三半期に低疾患活動性以下となる可能性が最も高かったのは、第1三半期でステロイドを使用していないグループでした。

第1三半期に低疾患活動性以下であった77人の患者さんのうち、58.4%は第3三半期で寛解となりました。第1三半期で中疾患活動性以上で自己抗体陽性であった91人の患者さんのうち、第3三半期で寛解となった患者さんはわずか5.5%でした。第1三半期に中疾患活動性以上で自己抗体陰性の患者さん22人では、そのうち36.4%が第3三半期で寛解となりました。