治療薬の選び方

ポイント2:「副作用のリスク」と天秤にかけるもう一方は?

ポイント1の終わりに出てきましたが、薬を選ぶ際には、「病気がある」という「前提」を考えた上で判断しなければなりません。この「前提」を意識して考えてほしいと思います

では、実際に薬を(使うかどうか)選ぶ局面を想像して下さい。

例えば、関節リウマチを飲み薬で治療してきましたが、効き目はあったもののもう一つというところで効果が頭打ちになってしまいました。主治医からは生物学的製剤の注射薬を勧められました。その薬は多くの人に効果がありますが、一方で感染症のリスクが増えてしまう薬です。この局面で患者さんからよく言われました、「その薬はキツんでしょ?」。キツいとは副作用のことを指しています。

もちろん副作用についても十分に考慮しておく必要があります。それは重要です。しかし、次のような天秤を考えてはいませんか?

 「副作用がない薬」と「副作用の強い薬」。

   *実際には副作用のない薬なんてありませんが分かりやすいようにそうしておきます

「副作用のない薬」と「副作用の強い薬」の2つを天秤にかけたら副作用のない薬を選ぶべき、そう考えるのは当然の心理です。ただ、こう考えるべき局面は、「病気という前提がない人」、もしくは「どの薬も効果はみな同じという前提」という場合です。

しかし、実際には関節リウマチという病気が目の前にあります。これが、「前提」というものです。前提として関節リウマチがあり、治療をしなければ「関節が壊れていき、日常生活ができなくなっていく」という状況があるわけです。

この前提を踏まえれば、天秤にかけるものは、

 ①「この治療薬を選ばなかった時にどうなるリスクがあるか」
 ②「この治療薬を選んだ時に出てくる副作用のリスク」

の2つです。

この2つを天秤にかけて、①が重くなってしまうのであればその治療薬は選ぶべきです。反対に②が重くなってしまうのであればその治療薬は選ばないべきですし、他の薬でこのバランスがとれる薬を探すべきです。